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『哲学入門』限界状況から始まる哲学

哲学入門 (新潮文庫)
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ヤスパース
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 ヤスパースが、人間が哲学を始める動機の最後にあげているのは、「限界状況」です。

私は死なねばならないとか、私は悩まねばならないとか、私は戦わねばならないとか、私は偶然の手に委ねられているとか、私は不可避的に罪に巻き込まれているなどというように、たとえ状況の一時的な現象が変化したり、状況の圧力が表面に現れなかったりすることがあっても、その本質においては変化しないところの状況というものが存在します。私たちはこのような私たちの現存在の状況を限界状況と呼んでいるのであります。すなわちそれは私たちが越え出ることもできないし、変化さすこともできない状況が存在するということであって、これらの限界状況はかの驚きや懐疑についで、哲学のいっそう深い根源なのであります。私たちはあたかもこれら限界状況が存在しないかのように、目を閉じて生活することによって、これら限界状況から逃避して、単なる現存在の状態において生きるという場合がしばしばあるのです。私たちは、自分が死なねばならないということを忘れる。自分が罪を負っていること、偶然の手に委ねられているということを忘れる。 (上掲訳書26頁)

 自分が死なねばならないことを忘れたり、己の罪深きこと、この世は、いつどうなるか分からないことを忘れているあいだは、哲学は始まらないとヤスパースは言います。

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